漫画家マンガの世界

漫画家を主人公にしたマンガ「漫画家マンガ」を語ります

男の条件 感想の1

漫画家が主人公の漫画が好き、と書いたら、ネットの友人たちが「今さら、まんが道やトキワ荘じゃないでしょ」と言って、当代の漫画家マンガを紹介してくれた(「かくかくしかじか」、「明日にはあがります。」など)。
古い漫画しか知らない私には大変有難いことだった。
で返礼といってはなんですが、昔の漫画家マンガの珍品をご紹介しておくことにします。


「男の条件」原作・梶原一騎、画・川崎のぼる
※1968~1969、週刊少年ジャンプ連載


男の条件ってテストステロン(testosterone、男性ホルモン)でしょうが!
と混ぜっ返したくなる、あまりにあんまりなタイトル。
ほんと、恥ずかしい。


で。さて。
「バクマン。」の中でシリアスギャグなる物が語られる。
シリアスギャグとは、「バクマン。」の作者にとって「男の条件」のことだと思われる。
「男の条件」は、「バクマン。」の作者から見れば遠い昔ジャンプに載った先行作品であり、とりあえず越えなければならないハードルだったであろう。
だから読み込んでいるはずだし、それが今読むと笑えるのだ。
ギャグとしか思えない。
私も今回読み返して抱腹絶倒。
ページを繰るたびに笑わずにいられなかった。


それでも。
リアルタイマーの私には連載当時を振り返って読者の反応を言うこともできる。
1968年頃にはもちろんギャグ扱いなどされてはいなかった。


梶原は、どう見てもインテリだった(PTAにすら愛された)手塚治虫の逆を行って、成功した。
手塚漫画の可愛い絵柄や良識とは正反対の、手塚がやらないことを好んで描き、それが読者の目に鮮烈に映った。
(肉体労働者、少年院、ドヤ街、やくざ、スポーツの特訓など)


手塚漫画との出会いによって、漫画から何かを学ぶことができると知った読者たちは、梶原作品からも生真面目に学ぼうとした。
笑うどころではなかったのだ。


「男の条件」を書いた時、なんと梶原は少年マガジンに「巨人の星」「あしたのジョー」という二大スポーツ漫画を連載中だった。
(週刊誌に三本同時に掲載していたのだ!)
従って「男の条件」は、今も日本のスポーツ漫画の金字塔と讃えられる「巨人の星」「あしたのジョー」の裏で、梶原が何を考えていたかをうかがい知ることのできる資料でもある。