漫画家マンガの世界

漫画家を主人公にしたマンガ「漫画家マンガ」を語ります

アオイホノオ(1~8巻)

第1巻から8巻まで一気に読んだ。
11月2日現在、19巻まで出ているというからあと11冊読まなければ。


いや読んだところで完結には届かない。
今も連載中、進行形の大長編。
漫画家(orアニメーター)志望の主人公が、次々と行く手に現れる障害を乗り越え、運動会よろしく爆走していく物語。


『アオイホノオ』 島本和彦
※文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞
※小学館漫画賞一般向け部門 


テレビドラマ化もされ、イケメンの柳楽優弥が主役を演じ、血管切れそうな演技を見せた。


※公式サイト


読者諸氏がもしどこかで「眼高手低(がんこうしゅてい)」という言葉に出会ったら、この作品の主人公、焔モユルを思い浮かべてほしい。
焔モユルこそ、この言葉で表される人物像の典型である。


がんこう-しゅてい【眼高手低】の意味・使い方(goo辞書より)
https://dictionary.goo.ne.jp/leaf/idiom/%E7%9C%BC%E9%AB%98%E6%89%8B%E4%BD%8E/m0u/
目は肥えているが、実際の技能や能力は低いこと。知識はあり、あれこれ批評するが、実際にはそれをこなす能力がないこと。また、理想は高いものの実力が伴わないこと。▽「眼高(めたかく)手低(てひくし)」と訓読する。


従ってこの作品は眼高手低コメディとも呼び得る。


8巻まで読み終えて実は疲れてしまった。
ストーリー展開のパターンが同じリズムで繰り返されるからだ。


目標(越えるべき障害)が見える→「楽勝だ」と馬鹿にする→楽勝の理由を分析し述べたてる→力及ばず挫折→新たな目標(越えるべき障害)が見える→また「楽勝だ」と馬鹿にする…


70年代の漫画やアニメ、そしてその作家たちに対する感想や批評が書かれる。
これらはズバリ的を射ており素晴らしい。
(ここが眼高パート)


コメディだから手低パート(力及ばず)が出てそれが落ちになるのだが、眼高パートだけでも読み応えがある。
「読む側が疲れたなんて言ってちゃ悪いなあ」
と思えるほどの気迫が伝わってくる。


描くためにこれだけテンションを引き上げるのは大変である。
作者も人間だから具合の悪い時もあり落ち込む時もある。
つねに平坦ではありえない精神状態を整えるだけでもひと苦労のはず。
作者の漫画愛の大きさと、おそらくその漫画愛から生まれるのであろうエネルギーに敬意を表したい。


9巻以降を読んだら、また書くかもしれない。