漫画家マンガの世界

漫画家を主人公にしたマンガ「漫画家マンガ」を語ります

アオイホノオ(9~18巻)

『アオイホノオ』 島本和彦


8巻まで読んで挫折したところマイミクのるとがあさんから、
「めげずにお読み!」
という叱咤激励をいただいた。
彼女(るとがあさん)も昔からの漫画読み、かつ目利きであって、私の趣味もよくわきまえてくださっている人だから、黙殺することなどできない。
9巻から再開し、18巻まで読んだ。


現在19巻まで出ており、来月発売予定の20巻でも完結はしていない模様。
緻密な計算にもとづいて描かれた『バクマン!』と比較すると、テキトーな構成で無駄ゴマの多さも感じさせるものの、これだけの長編でこれだけのテンションを変わらずに維持できるのは凄い。
漫画への愛を一直線に(無反省に)力強くうたい上げている点では、間違いなく漫画家マンガの最高峰だろう。


主人公、その名も焔燃(ホノオモユル)。
なんとかデビューに漕ぎつけた彼、さて連載を目前にして原作者やメカデザイナーとの関係にあがく。
例によって「傾向と対策」は十分に練るのだが実際は予想と大幅にズレてしまう。


苦闘のまっただ中にある時は、誰しも今の自分の状況を笑える日が来るのか、来れば良いなあ、と考える。
がその日が来たとしても(心に傷を負ってしまい)笑える人は少ない。
過去の経験をギャグにできる作者は理性的で強い精神の持ち主だと思う。


私は自分の過去は闇にしたい。
ひとつだけ言うと、
(少年誌なのに)「ラブコメを描け」
と指示された記憶は私にもある。
女だから、焔燃よりよほどしつこく言われた。


私は(『アシさん』の主人公と同様)女子トークというやつが苦手。
ラブコメディなんてどこが良いのかわからない。
焔同様、ヒーローが描きたいから少年漫画作家をこころざしたのだ。
せっかくチャンスが来たのに、そいつはない!
「恋愛漫画が描きたければフレンド(週刊少女フレンド)に行ってます」
と答えたものだ。


私の頃にはまだ編集部に『あしたのジョー』の幽霊がウロチョロしていた。
編集者自身がうっとりして、
「ジョーは最高でした」
と、口を開けば言う。
しかしそんな己れを抑え込むかのように、
「でも時代が変わりました」
と続けていた。
ラブコメ指示は編集者にとっても不本意だったのだ。
そんな時代だった。