漫画家マンガの世界

漫画家を主人公にしたマンガ「漫画家マンガ」を語ります

そしてボクは外道マンになる(4巻)

『そしてボクは外道マンになる 4』


『そしてボクは外道マンになる 4』 平松伸二


漫画家が一人ぼっちでネーム(ストーリーとコマ割り)を考える。
長時間の集中を続けると、睡眠時のような脳の状態が現れ、無意識界にアクセスすることがあるらしい。
するとどうなるか。
夢に近い物が見えてくるのだ。


『月と指先の間』の主人公にはジョルジュという名の「ネームの精」が見えた。
『そしてボクは外道マンになる』の主人公(平松伸二)には外道マンという悪魔が。


可愛いジョルジュと怖い外道マンを同一視してはイカンような気もするが、両者は出現時の条件の他に、現実にはいない生き物の姿をしている点、主人公にとって痛い話をズバズバ容赦なく語りかけてくる点、主人公以外の人間の目には見えない点、主人公の分身であることを主人公がうっすら勘づいている点が共通している。


それゆえこういう現象は完全な虚構ではなく、(少なくともこれに近い現象は)漫画家という職業の人には実際起こりがちなのかもしれない、と考えられてくる。


犯罪者を描く時には犯罪者に感情移入し、殺人を描く時にはリアルに自分が人を殺す状況を想像する。
現実と作品世界の区別があやうくなる。
(永井豪からも同様の話を聞いたことがある)
『そしてボクは外道マンになる』では特にこういう精神の危機感がよく表されていると思う。


この漫画はこの巻で完結になるが、主人公の精神状態がこれ以上悪化すると彼は狂気に突入するしかなくなる、と思える。
この先は読むのがつらい。
自伝としては中途半端だが、むしろここで完結して良かった、と思った。