漫画家マンガの世界

漫画家を主人公にしたマンガ「漫画家マンガ」を語ります

石ノ森章太郎の物語


『石ノ森章太郎の物語』 石ノ森章太郎


15本の短編が一冊にまとまっている。
すべて「自伝的」ストーリー。
フィクションとノンフィクションの混合率が作品ごとに異なる。
SFあり、ファンタジーあり、エッセイ風あり。


私たちの世代の漫画マニア、特に漫画家志望者は皆が皆、石ノ森の影響を受けた、と言って良いと思う。
古典的名著『漫画家入門』には「漫画の描き方」よりも「漫画家になる方法」が具体的に書かれており、中高生の憧れを強烈に誘った。
(私もこの本で身を誤った)


『石ノ森章太郎の物語』は生誕80周年記念と銘打ってあるが、解説はほとんどない。
最初の『青いマン華鏡』の後にただ1ページ、石ノ森の人となりを語る文があるが、これは誰の言葉なのだろう?
アイディアに苦しむ姿を見せなかった、筆が尋常ではなく速かった、とんでもない量の原稿を描いた…など。


ここに、
「石ノ森は自分を登場させるマンガをけっこう描いている。おそらく自分が常識人である自覚がとても強く、それゆえに観察者/傍観者に相応しいと思っていたのではないだろうか」
と、ある。


いやいや、『漫画家入門』は熱かったよ、冷静なんてことはないよ!
と思い。
思わず『漫画家入門』を読み返してしまう。


すると確かに石ノ森の筆致は知的で理性的。
感情を押さえぎみであることが読み取れた。


熱さは、当時の私の年齢が感じさせたものだったのか。
つまりこちらが(読む前から)熱かった、ということなのだろうか。
少年ジャンプ系の(たとえば平松伸二のような)漫画の熱さに今では慣れてしまった私の目が、過去の漫画の熱さを感じにくくなっているだけかもしれない。


石ノ森は今では実写の仮面ライダーや戦隊ものシリーズの原作者として知られる。
この本ではそれらとはまったく感じの違う石ノ森作品に会うことができる。