漫画家マンガの世界

漫画家を主人公にしたマンガ「漫画家マンガ」を語ります

男の条件 感想の5

今日のテーマは「男の条件は筋肉か?」。
(^o^)


男らしさも女らしさも多分に社会的なもの。
勝つためには敵や競争相手がいる。
優しさも、発揮するには相手が必要。
生き物が全くいなくなった地球上では成り立たない。


それを踏まえて脱線する(?)が、漫画家らしさを描くのに筋肉描写は無用、と私は思う。
漫画家志望の私の友人の一人がバイトでトラック運転手をやり、家に帰ってペンを握ると、ハンドルを握りしめていた手が震える。
そのために絵を描けなくなって、志望を断念した。


筋肉モリモリの漫画家に会ったことも、実はないではない。
故・あすなひろし。
ここを見ていただければわかるが、繊細優美な絵を持つ素晴らしい漫画家であられた。

若き日のあすなは一見ドカタ風。
丈夫そうで、殺しても死ななそうで、早世したことがいまだ信じられない。


私の師匠、故・池川伸治も、漫画家を引退してからは肉体労働で家族を養っていたそうだ。
(若き日の池川は長身のハンサムだったらしい。
何度もお会いしているのに「らしい」とは何事、と言われそうだが、私のハンサムの基準はどうも普通と違っており、彼美形でしょう?と訊かれて、はあ?と答えたことが再三ならず。
ネットを見ると、池川は正体不明、消息不明の「消えた漫画家」とされている。
私は晩年の写真も作品も持っておりますので、見たいかたはご連絡ください。
あ、「ミナミの帝王」の郷力也の師匠です、といえば若い人にも通じるのかな?)


漫画家は身体強健でなければつとまらない。
だがスポーツマンのような筋肉や運動神経は必要ない。
机にへばりついてひたすら絵を描くのが仕事だからだ。
それでは不健康だというので、野球・サッカー・ゴルフなどを趣味にしている漫画家も多いけれど、あくまで健康な肉体を維持するのが目的であって、仕事ではない。
(その趣味を漫画に描いている漫画家も多いからややこしい。
しかしスポーツが仕事よりも優先されることはない)


川崎のぼるは、自分もそういう(机にへばりつく)漫画家でありながら、筋骨隆々たる主人公を描いた。


今でも筋肉ヒーローは多いが、というかますます増えているが。

今も昔も、こんな筋肉多めのガタイが、少年読者のあこがれ。
だから川崎のぼるは、筋肉不要のはずの漫画家にも筋肉をつけたのだろう。
で、私に笑われてしまったのだろう。


個人的なことを言わせてもらうと。
昔から少女(女性)に愛読されてきたこの漫画シリーズ。


「小さな恋のもがたり」 著者・みつはしちかこ


私は一冊も完読したことがない。
友人が貸してくれても、結局読めない。
どこが良いのか(面白いのか)わからない。
ヒロインに感情移入できない。


「一体この男(ヒーロー)は何!」
と思ってしまうのだ。
どうにもこうにも男に見えない。
だからヒロインの恋愛感情がわからず、キャー素敵!などと思いようがない。


やはり少年漫画のヒーローのほうが素敵なのである。
男に見えるのである。
では「小さな恋のものがたり」のサリー(ヒーロー)に足りない物は何だろう。


筋肉か?

それは少女時代の私の、大きな疑問だった。


疑問を解決してくれたのが、「男おいどん」である。


おいどんはチビで頭がデカく、眼鏡をかけ、痩せて筋肉がない。
当人も言っている通り「ナサケない」肉体の持ち主なのだが。


筋肉をそぎとったガタイで、むしろわかった。
「骨格が描けている」
と!


サリーにないのは男の骨格であって、だからふわふわに柔らかく見える。
女に見える訳でもないが、ガツンとした強さが感じられない。
すらりとしていようがなんだろうが、それでは私には駄目だったのだ。


そうわかってから見てみると、川崎のぼるは筋肉だけではなく骨格も見事に描けていた。
島本和彦だったかも「男は骨だ」と言い、松本零士を例に挙げている。
まことにそういうこと。
異議なしである。