漫画家マンガの世界

漫画家を主人公にしたマンガ「漫画家マンガ」を語ります

男の条件 感想の8

私は、目の前で師匠(池川伸治)の廃業宣言を聞いた。
「僕はもう駄目です。
貸本屋はなくなります。
単行本漫画の出版社は潰れます。
君たちは雑誌に行きなさい」


単行本というのは貸本屋で貸していた漫画。
都内では曙出版やひばり書房が有名だったが、そこのトップ作家は永島慎二でもさいとうたかをでもない。
(聞いた話で根拠は薄いけど)
他ならぬ池川伸治だったようですよ、若い人たち。


君たちとは池川が指導していた漫画家志望者たちをさしていた。
月に一度だったか、団子坂(文京区)近くのアパートの一室で池川の漫画教室のようなものが開かれていた。
私もその中の一人だったかもしれないが、そうでなかったかもしれない。


学生服のムサイ男子高校生どもが占拠する部屋に一歩もはいれず、廊下に立っていて、さがみゆき(池川夫人)にカリントウやお煎餅をもらっていた。
(私自身もセーラー服を着ていた。
当時の子供のフォーマルなスタイルは学校の制服だった)


その時の池川はまだ30歳前だったと思う。
こんな状況で漫画家(漫画原作者)になりたいとは到底思えなかった。
怠け者の私、苦学とか刻苦とか「苦」のつくことは徹底的にイヤだった。
不景気もイヤだった。


ああまた脱線だ。


話を本筋に戻して。
不可能を可能にするのがヒーロー。
なるのが難しかったからこそ、『男の条件』の主人公は主人公たり得た。
主人公の目標は大きく派手なほど良く、当時高額納税者になりおおせてベンツなんかに乗っていた(らしい)漫画家は、子供たちの目にカッコ良く見えたのだろう。


でもやはり、スポーツとは全然違うと思うよ。
(^o^)


梶原の作品には、未熟な主人公を鍛える大人のコーチが必ずと言っていいほど出てくる。
『あしたのジョー』の酔いどれボクサー、丹下段平。
『柔道一直線』のアル中柔道家、車周作。
『巨人の星』のスパルタとうちゃん、星一徹。
などなど。


『柔道一直線』 この絵は永島慎二。斉藤ゆずる版もある。


その乗りで『男の条件』には孤高の漫画家、男谷草介という漫画家が登場するけど。
この男谷、ハンサム(私が見るところのハンサム)だけがとりえで、漫画を描かない。
全然描かない。
(一作は描くが、本には載せてもらえない)
で能書きばかり垂れ、他人を批判し説教する。


これには笑える。
梶原作品のコーチキャラとしては、歴代最悪だと思う。


私が梶原風に感想を言うなら、


「男なら行動せよっ。
能書きはいらぬっ。
ヒット作を描いてみせよっ。
日本全土の少年読者を熱狂させる漫画をっ!」
ってところ。